https://note.com/megabi0/n/n0ce7c023b85b
音声は記事に関してnotebookLMで自由に語ってもらった。
開きたくない人用。
〇「けん、めがび神社に行きたいの」
母が言った。
「珍しいね、神社とか初詣すらいかなかった母さんが」
「あんた、この前森山さんに言われたでしょ。あんたのお母さん、めがび神社の神様に縁があるよって」
森山さんとは、超次元世界を渡り歩いている宇宙人だ。何を言ってるのかわからないって?
僕だってわからないんだよ。森山さんが言っているから。
「あれから気になるの」
「じゃあ、みんなで行くか」
「いや、次郎がいるとうるさいから二人で」
数日後。
父や妻や子たちをイオンで遊ばせつつ、僕と母はめがび神社を訪れた。ひゅるりと風が吹く。
「母さん、祭壇前で風が吹くの、神様があいさつしに来たって意味なんだって」
森山さんが僕に言ってた。
「私、何も感じないわ」
いまだに自分もよくわからない。今度森山さんが遊びに来たとき、改めて尋ねてみよう。
僕と母は100円を賽銭箱に入れ、パンパンと手をたたいた。
「母さん、一万円を入れなかったの?」
「馬鹿言うんじゃない、こんなところに一万円を出せるわけないでしょ」
建物がきしむ。
「とはいえ、一万円を払って、私がこの神様とどんな縁があったのか、聞いてみたい気もする」
じゃあ払えば……なんて言えるわけがない。言ったら最後、僕も払わされ、地獄の追求が来るから。
参道を歩きながら、
「結局、私はめがび神社の何に呼ばれてるのかしら」
「わからないよ。前世の縁とかじゃないの」
ひゅうっと風が吹く。
「私の前世は武士の家系だよ。島根から新潟を渡って、ここに来たらしいから」
「じゃあ、その時にめがび神社の神様と縁ができたのかもな」
ふと、僕は疑問が浮かんだ。
「あら、けんさん、それと」
めがみこが声をかけ、僕らは頭を下げた。
「そうだ、めがみこ、めがび神社ってどの神様を祀ってるの?」
〇めがび神社にいる神様の正体
「一応めがび様となっています」
「一応?」
僕らが尋ねると、
「正確には名前も顔も姿もないんですよ。ここにいるだけで」
「なんか、わかるわあ」
母がうなずいた。本当か?
「そうだ、めがびの由来って何かわかります?」
母が尋ねた。
「もともと女神と数字のゼロを組み合わせた存在です。ゼロ、それは何もない。女神。象徴として当てはまる人もいるけど、たいていは神話上で、私たちの目には見えない。でもいる」
僕たちは近くの休息所に入り、座る。休息所は喫茶店でもあり、3人の参拝者がいた。
「女神がゼロ、それでめがび。じゃあ、めがみじゃなくめがびなのはどうして?」
給仕さんがお茶と団子を持ってきた。めがみこも椅子に座り、
「私もこれはわから……ああ、そういうことですか」
めがみこは天上に向けてうなずいた。
「初代神主、佐藤太郎がめがみ様でなく、よくめが”び”様と言ってました。それだけですって」
「神様は何も突っ込まないの?」
「むしろそっちのほうが目立つからいい、っておっしゃってますわ」
めがみこがほほ笑み、僕らも笑う。
「めがみこさんはここの神様とお話しできるんですね」
「向こうから一方的に話が来るだけですよ」
「じゃあ、私とめがび神社の関係って、聞けます?」
母がさらにめがみこと距離を詰めて尋ねる。
「何も語ってこないので、あまり気にすることはないかと」
「はあ、残念だわ」
母が椅子に座った。
「めがみこ、めがび神社に関する逸話とか神話ってない?」
「残念ながら神話も逸話もありませんよ。あるのはけんさんも現在味わってる対話だけ」
僕らは笑う。
「……おお、そうですか。一つ逸話があって紹介したいらしいですよ」
〇神主として
私の名前は佐藤太郎。めがび神社初代神主である。もともと神主と縁のない職業だったが、仕事で心を病み、ある神社へ参拝したとき、気分が晴れた。
あの時の感動が忘れられない。修行の後、念願の神職についた。私が受け持った場所がめがび神社。初めて聞いた神様の名だ。
「これからよろしくお願いします」な気持ちで参拝したら、自分の財布から一万円が出ていった。これは神社管理費に使……って、これ、キャバクラで遊ぶはずの金だったやんけ。
「どのキャバ嬢が好みですか?」
第一声にぎょっとした。あたりが暗くなった。風の声もない。
「ふみよちゃんです」
……なぜ私は答えているんだ?
「ふみよはどこがお気に入りですか?」
知らないうちに私の領域へ入り込んでいく神様。きちんと答えないと現実に戻れないようだ。神様の声にこたえているうち、私は気が付いた。
「私がこの職業についたのと、ふみよさんに惚れた動機は一緒なんですね」
あたりが一気に明るくなり、ひんやりとした風が体に入り込む。肉体と別れた今でもよく覚えている。
私はキャバクラ通いをやめた。ふみよさんも気にならなくなった。
数年後、私は結婚した。妻のいとこがふみよさんだった。
「……で、私はふみよの子孫なんですよ」
めがみこの前に5人の参拝者そして店員までもが話を聞いていた。
「はっはっは。神話みたいなのを期待していたが」
「この神社にそんなのありません……ああ、これだけはみんなに言えと」
めがみこが天井を見上げた。
「神話はあなたたちが創るものであって、伝えるものじゃありません、と」
電話が鳴った。
「ああ、今行くよ。めがみこ、ありがとう」
「いえいえ、また参拝に来てください」
温かな風が吹いた。僕らは車に乗り、エンジンを回し、車を走らせ、母は言う。
「結局、私がめがび神社に呼ばれた理由、何だったんだろ?」
「たぶんね、話がしたかったんだと思うよ」









