notebookLMで解説してる記事
本編開きたくないなら……
めがび神社に行きたいんだけど…
花田美和子はかねてから「悪評の多い神社」に行きたいと思っていた。
「ご利益のある神社」を調べていた時、たまたまテレビでお笑い芸人の葉山秋山が番組内で参拝していた。
「神が俺を笑わせにきただと」一言が衝撃だった。
※その時の出来事はこちら
色々調べると「真っ黒な空間に連れていかれて、いろいろ突っ込まれる」らしい……
7月7日日曜日
美和子はめがび神社がある街に降りた。ここにくるまで飛行機、駅、バスと乗り継いだ。ガイドマップだと駅から18号のバスに乗れば、神社につくという。
目的地の「めがび神社前」についた。ブザーボタンを押してバスが止まり、380円を払い、降りる。
「ああ、めがび神社が私を待っている」
少し登らねばならぬが、きつい距離ではない。にぎやかな音楽が流れる。人々が並んでいる。
一歩、また一歩踏みながら、美和子はめがび神社の鳥居を潜り抜けた。
「よし、誰も並んでない」
美和子は賽銭箱の前に立つ。異空間へ行くには一万円が必要らしい。一応財布に5万円入っている。一万円を……入れられるわけがない。体験者の話によると「気づいたら入れていた」らしい。
100円を入れて静かに黙とうをささげた。
(……何も起きなかった)
美和子はため息を吐いた。太陽が隠れ、涼しい風が吹き、心地よかった。
この神社、期待外れ
「いらっしゃいませ」
いろんな露店はもちろん、巫女さんらも商品を売っていた。美和子はいくつか買う。緑髪の美しい巫女さんが、とても気になった。
「あ、あの、この神社って得体のしれない神様って、出てこないんですか」
美和子は口をパクパクする。
「……今のあなたはあなたに呼ばれてないからですって」
巫女さんは笑顔で答えた。
「呼ばれる? 私、埼玉からここに来たんです」
「わざわざ埼玉から、ありがとうございます……ええ、今のあなたは興味でここに来た。それは呼ばれたとは言わない、と言っているんですよ。本当に失礼ですねえ」
美和子の周りに人が群がる。
「めがみこさん、やっぱり神様の声、聞こえるんですか?」
右隣にいた親父、篠田史郎が尋ねると、
「聞こえるというより、勝手にしゃべってくるんです」
「俺、めちゃくちゃ言われまくったよ。一応小さな会社の社長をやっているんだけど、会社より自分自身が興味を持ちましたか?って。あれすごかったわあ」
めがみこは頭を下げる。
「……それは私が言っているのではない、といってますわ」
「そうでしたか。すみません」
「いいえ……来月また遊びに来てくださいと言ってます」
「あ、はい。そのときちょっと会社内でイベントがあるんで、イベント終わりに参拝します」
史郎はめがみこに頭を下げた。美和子はひきつった表情を浮かべた。
「……私も何か問題がないと、神の声が出てこないのかな」
「それは違いますよ」
めがみこが目を見開き、真顔で言った。
「まあ、来るときはあなたの気持ち関係なくきますから、焦らなくていいですよ。今日は後夜祭もあるんですよ」
「あ、ああ、行きます」
夜のめがび神社
夜7時になるまで、美和子は町のグルメを堪能した。ホテル屋上から見える景色は立派だ。なんと優雅な時間だろうか。美和子は笑顔でホテルを出た。
タクシーに乗った。
「めがび神社に観光とは、珍しいですね」
運転手が美和子を見ずに言った。
「珍しいんですか?」
「悪評の多い神社ですからね。私、これからめがび神社にいくんですよ」
運転手は微笑んだ。
「参拝したら、真っ暗な空間に連れていかれるんですか?」
「よく連れていかれますよ」
運転者が笑った。
「真っ暗な空間で、どんな話をされるんですか?」
「それなんですが、お客様に伝えたくても言葉が出てこないんですよ」
運転手は何度も確認を取りながら、右折した。
「運転手さん、昼もめがび神社に行ったんですよ。参拝したけど、何もなくて」
運転手はうなずきながら
「お客さん、あの神社はね、人を試してくるんですよ。特に悪いほうを」
「わ、悪いって、ど、どういう」
「人間、いいことばかり言われても面白くないんですよ。つきましたよ」
カードで払い、にぎやかな神社の鳥居をまたくぐった。
彼女の前に参拝者がいた。引きつった表情を浮かべていた。次は怒った顔を浮かべていた。次は泣いていた。
「……怖い」
美和子は祭壇に背を向けた。逃げるようにホテルへ帰ろうとしたら、運転手さんが参拝してた。泣いていた。
美和子は別のタクシーを呼び、急いで神社から去った。
10年後の7月7日
私、花田美和子は気づいたら旅行券を取っていた。あの時と変わらないバスに乗り、めがび神社へ向かう。
若干、景色は変わっていたと思う。自分は何も変わらないのにね……ついた。お金を払い、降りる。鳥居をくぐる前に頭を下げる。くぐる。
にぎやかは変わらない。あの巫女さん、全く年を取っていない。笑ってしまう。
参列に並ぶ。賽銭箱の前にいる参拝者はいろんな表情を浮かべていた。
……あれ、あのおじさんはあの時の運転手さんだ。孫と一緒にいるのか。
私と目が合い、にこっと微笑み、私も頭を下げた。和む。
私の番だ。ポケットから小銭が入った財布を……あれ、札束?
「手が……」









